数年後なら1ヶ月でできることをなぜ1年もかけて早くからやらせるのか?楽器のお稽古にもみられる日本独特の方向性

先日、習い事をやめなくてよかった話を書きました。長年続けてきた楽器演奏でようやく一定の成果をあげたからです。

日本でも同じ楽器を習うお子さんがいて、近年では小学校低学年でもびっくりするような難易度の高い曲を弾いているのをYouTubeなどでも目にするようになりました。西欧にはいないタイプです。

日本とここ西欧では楽器演奏習得のための道筋や考え方が違うのは知っていたので、日本のお子さんがよく弾けるのはきっと「基礎練習を大事にしている」「練習時間が長い」からだと思っていました。日本の生徒は真面目な人が多く、親御さんも家でしっかり練習させるので、多分間違ってはいません。

しかし、それにしても低年齢でこんな難曲を弾くようになるなんて、どれだけ早いスピードで進んでいるのか?ととても疑問に思っていたことが、ここ数日で解明できました。

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日本の指導では中難度をごっそりと抜かしている その量4年分!

数日前に、たまたま同じ楽器を日本で子供に習わせている親御さんのブログに行き当たりました。世界的演奏家を目指して親子で頑張っていらっしゃいます。小学1年生ですでにうちの子供が小学6年生頃に習った曲を弾いていて、コンクールでも入賞してらっしゃいます。

現在は更新がストップしていますが、3歳で習い始めて2年後の年長さんあたりから、小学校高学年の頃までの、レッスン内容とレッスン曲、先生から指摘を受けたことや先生を変わったこと、練習時間と親の関わり方など、事細かに記してあり、とても参考になりました

これを読んで驚いたのは、低年齢で大学受験生と同じような曲を弾き、高学年でコンクールに入賞するようなお子さんは、「進みが早い」というよりは「器用な子供だと先生が判定したら、途中(中難度)をごっそり抜かしていきなり難曲に取り組ませて立派な演奏ができるように1年かけて練習させる」という方法をとっているということがわかりました。

ごっそり抜かしている量というのは、うちの子供のように、西欧で普通に習っている生徒の4年分に相当します。

例えば、初級の終わりあたりで必ず弾くAという曲があります。このAという曲を、ブログのお子さんは3歳でレッスンを始めて5歳の頃に弾いています。ここまで辿り着かずにやめていく生徒がたくさんいますので、素晴らしいことです。これにより、先生にとても器用な子供だと判定され、曲A(初級の終わり向け)の次に、いきなり上級の入り口で弾くBという曲を与えられました。

この曲Bも曲Aと同様に、西欧で同楽器を勉強している生徒も必ず弾く曲です。

ブログのお子さんは、このBという曲を1年かけてレッスンしています(その間、並行して練習している小曲は何曲か合格をもらっています)。この1年の間、人前で披露できる状態になってから、さまざまな機会に5回も6回も披露して、「小さいのにすごい曲を弾けるね」と喝采を浴びます。

そして、曲Bの次には曲Cという、大学受験で課題曲になるような、往年の巨匠もレコーディングしているような明らかに上級者向けの曲が与えられ、この曲Cをまた1年かけて練習し、人前で披露できるような状態になってから何度も披露し、喝采を浴びます。

そして、さらに1年後(小学校4年生頃)には曲Dという最上級者向けの曲を与えられ、長い時間かけて弾けるようにしている最中に、このブログの更新はされなくなっています。

つまり、小曲の他に、人前で披露するための勝負曲は1年もかけて準備しているということです。これには驚きました。1日の練習時間は4、5時間とのこと。親はつきっきりです。

そんなに時間をかけて頑張っているのに、曲Dをやっている最中にも先生からは、もっと音楽的にとか、基本的なテクニック不足の指摘を受けたりしています。ブログの文面からは、小学4年では曲を理解するには年齢が低く、難曲を弾くことに気を取られすぎて、細かいところまで気が回らない、音楽家ではない親も家でもはやどのように指導したら良いのかわからない、といった感じでした。

一番残念なのは、テクニック不足のせいで、高学年になっても楽器を傷つけてしまうようなミスがいまだにあるということでした。

この、初級の終わりあたりに皆が弾くAという曲、うちの子供は5歳で習いはじめて6歳で弾きました。その後、曲Bを弾くのは4年後でした。この4年間は、中難度の曲を弾いていました。つまり、ブログのお子さんは、この工程(うちの子供が中難度の曲を弾いていた4年間分)をごっそり抜かして、AからすぐにBに進んでいるということがわかりました。

近年の日本には、低年齢から難曲を弾く子供がたくさんいるとのことなので、このような指導をする先生が増えてきているのでしょう。

この、日本では抜かされている中難度の曲を弾いていた4年の間、うちの子供は約2ヶ月で1曲仕上げて次の曲に取り掛かっていくというペースでした。1ヶ月で仕上げた曲もあります。

その間に、レッスンに親が付き添うことも無くなったし、家での練習もほぼ1人でするようになり、譜読みも自力でできるようになってきました。姿勢も崩すことなく、素晴らしいとはいきませんが、基本的なテクニックは自分のものにしてきたように思います。曲も徐々に長く、複雑になっていきました。

中級者向けの曲ですから面白みにはかけるところがありましたが、基本的なテクニックや姿勢を崩すことなく徐々にステップアップしていたと思います。習っている曲をYouTubeで検索してみると、ヨーロッパや韓国の子供や学生が発表会や試験で弾いている動画は出てくるけれど、日本の子供が弾いている動画は全然出てこないので、日本では習わないのかな、と思っていました(まさかすっ飛ばしているとは思わなかった)。

小学6年で曲B(上級の入り口に習う曲)を弾いた時には(ブログのお子さんは小学1年の時)、1人で1週間で譜読みを終わらせ、すぐに暗譜して1ヶ月で合格しました。中学1年で曲C(上級)と同程度の曲を習ったときは(ブログのお子さんは小学2、3年)、譜読み開始から6週間で暗譜しピアノ伴奏に合わせて試験で弾いて、高評価で合格しました。練習時間は1日2時間程度です。親は練習やレッスンに付き合っていません。

何が言いたいのかというと、数年後なら自力で1ヶ月でできるようなことを、なぜ親がかりで1年もかけてやるのか?ということです。しかも、レッスンも毎回親が同席し、録音し、先生に指摘されたところを親がリスト化し、次のレッスンまでにできるようにするために家の練習も親がかかりで1日何時間も猛練習をして。

確かに、難曲に取り組むことはステップアップにもつながります。しかし、3、4年後には自力で1ヶ月でできるようになることをわざわざ親がかりで全力で1年かけて取り組むというのは、いくら拍手喝采いただけるとしても、非効率すぎやしませんか。

やらせたらできるからどんどんやらせるのか?でも、今やらなくてもいいこと無理してやらなくてもよくない?

これって、小学1年生で高速計算を仕込むとの同じ構造だなと思いました。数年後にはもっと楽にできるであろうことを、小さな子供に徹底指導する。うちの子供はどんぐり問題をやっていたので、高速計算の練習は全くさせませんでしたが、中学の今は特に計算に困っていません。文字式を習えば、計算を工夫するようにもなりました。漢字も、低学年のうちからノートいっぱいに書かせなくても、学年が上がるにつれ、少ない回数で要領よく覚えられるようになりました。

非効率な練習や勉強で失われていく時間や労力で、別のことに取り組む方が人生豊かではないでしょうか。数年後にできることは、その時にやれば良いのではないでしょうか。

それにしても、いくら本人や親御さんが世界的演奏者を目指していて協力を惜しまないといっても、このような指導する先生も罪深いなあと思いました。難しいことをさせすぎて、基本がまだ完成していないというのですから。楽器を傷つけてしまうなんて、どんな弾き方をしているのか?と思います。

この親御さんは、曲Dを習っている最中に指導者を変更しました。業界では成果を出していると有名な先生だったようです。しかし、自分の子供が難曲Dをなかなか弾けるようにならないことに疑問を感じ、また、自宅での指導に限界を感じたようです。違うタイプの先生に変わった後、ブログの更新は途絶えています。

受験勉強における「先行逃げ切りが勝ち」「中学受験は親の受験」みたいなマインドが、多方向に現れているのだと感じました。

音楽は、人生を彩ってくれる強力なツールです。今はどうしてらっしゃるのかわかりませんが、とても器用で、根気も集中力もあるお子さんなのだと思います。是非とも一時の見栄えに囚われず、長い目で見て子供の人生を彩るような、一生かけて勉強しがいのあるような対象となるように導いていって欲しいものです。

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この記事を書いた人

西欧で「どんぐり問題」を子供にさせていました

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